さて、夏の盛りもそろそろ終わり、晩夏の名残の残暑にはもう少し悩まされそうです。
酷暑には随分苦しめられたものの、毎年夏の終わりには、何かをやり残したような、寂しさを少し感じてしまうのは、筆者だけでしょうか。
晩夏から初秋といえば、野分(のわけ)のシーズンとなります。野分とは文字通り野の草を吹き散らかして分けるほどの暴風のことです。
北太平洋高気圧の位置や、強さが少し収斂し偏西風の影響もあり、台風が日本に上陸する回数が統計的に多いのが、この季節であります。当然上陸するような台風の影響で野分が起きるということですので、厳密には野分イコール台風ではありません。
野分という雅な言葉が使われていた頃は、上陸しない台風など問題にもならなかったようですが、気象観測などにより明治以降は台風になる規模の大きい熱帯低気圧も存在を知られるようになり、最近は野分などと仰る方の方がむしろ稀です。
さて、台風は基本的には熱帯低気圧(Tropical cyclone)であります。その熱帯低気圧の条件としては
①前線を伴わず、暖気核のみでの構成であり
②潜熱をエネルギー源として発達した
③天気図上では等圧同心円を描く
④対流圏下層から上層までの広い層で低圧部を構成する低気圧のことであります。
更に台風となりますと、北太平洋もしくは、東シナ海の赤道以北で東経180度以西に存在する、10分間平均の風速が34knot(毎秒17m/s)以上のものを指します。
180度以東で発生したもの(北大西洋・北東太平洋にあるもので、風速64knot以上をハリケーンと呼びますが)がふらふらと180度を超えて越境してきた場合も、越境時点で台風となります。
ついでですが、サイクロン(東経100度以西のインド洋とその周辺の北半球、そして南半球に存在)と台風は存在する位置(海域)の違いで、風速が34knot以上と共通ですが、ハリケーンだけは風速64knot以上とより巨大な暴風雨を伴う熱帯低気圧を呼びます。
従って、ハリケーンとは呼ばれないただのトロピカル・ストームで、風速30m/s程度のものでも西進して180度を越えた時点で台風と呼ばれるわけです。
元々台風の語源はギリシャ神話のゼウスとの戦いで有名な、ガイアの末子テュポンに由来するとか、ペルシャ語で嵐を意味するtufanが東洋に渡り颱風となり、英語のTyphoonになったという説などがありますが、日本では明治末に颱風が採用され、戦後の1955年に同音漢字による書き換え制定により台風と表記するようになったとのこと
お話が前後しますが、世界気象機関の分類ではTropical Depletion(TD)が一般的な熱帯低気圧で、先ほどの風速34~47knot(風力8〜9)でTropical Storm(台風・サイクロン)、48〜63knot(風力10〜11)でSenior Tropical Storm、更に64knot (風力12)OverをTyphoonとしてハリケーンがこれに入ります。
赤道付近の高い海面温度により上昇気流が起こり発生する積乱雲が多数まとまり、渦を形成しその中心付近の気圧がさがり、熱帯低気圧が発生し更に海面からの水蒸気をエネルギーとして発達するというのが、メカニズム。低緯度付近貿易風により西に流され、地球の自転の影響で北に進みますが、中高緯度の偏西風と北太平洋の発達した高気圧の縁を転回点として、北東に進路を取ります。
本州4島に上陸すると陸地との摩擦により急激に減衰し海面からのエネルギーが得られなくなると、風速が弱まりただの熱帯低気圧になったり、北部の寒気団との間で前線を造り温帯低気圧となります。
台風の呼び名は、昔は「伊勢湾台風」などと被害場所などで後付けの名前が有名になっていますが、気象庁発表の1月1日以降の年度で若い順に1号からスタートする日本の呼び方に加え2000年以降は台風委員会が定めた名称(アジア名)が付加されています。
台風委員会というのは、1968年アジア太平洋経済社会委員会と、世界気象機関(WMO)が共同で設立した台風防災に関する各国の政府間組織で、マニラに本部を置いています。
設立当時の加盟は中国・香港・日本・ラオス・フィリピン・韓国・タイの7か国その後カンボジア・マレーシア・ベトナム・マカオ・北朝鮮・シンガポール・合衆国と暫時増加し14か国で構成されます。
名前は各国が10ずつ提案した合計140の名称にから、2000年の第1号にカンボジア語で象を意味する「ダムレイ」と名づけられ、以降発生順に順番に付けられ、一巡すると再び「ダムレイ」と付けられます。およそ年間25〜26程度の発生がありますので、5年程度で一巡りとなるようです。
因みに日本の提出した名称は全て星座の名前です。5番目てんびん、19番やぎ
、以降33うさぎ
、47かじき
、61かんむり
、75くじら
、89こっぷ
、103こんぱす
、117とかげ
、131はと
、となります。確か今年の8号にくじらと名付けられた筈です。
これまでの(無論観測史上ですが)最大風速は昭和40年の23号台風で、室戸岬で観測され、69.8m/sこれは137knotに相当し、120knot以上の所謂スーパータイフーンであります。
瞬間最大風速では、昭和41年の18号台風(第二宮古島台風)の宮古島観測データ85.3m/s(167knot)。平成に入ってからは平成15年の第14号で74.1m/s(145knot)これも宮古島観測での記録が残っています。
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